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フリーランスは、企業から仕事を受注している人が多い思います。
これまで、仕事を受注する立場のフリーランスは、不利な契約条件や取引において不利益を受けることが多くありました。
そこで、下請けとして働く中小企業やフリーランスを守るために「下請法」という法律があります。
そこで今回は、フリーランスが知っておきたい下請法の基礎知識について解説します。
フリーランスを守る下請法とは?
下請法の正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」という法律です。
正式名称のとおり下請法は、
です。
具体的には、親事業者(クライアント)が、優位な立場を利用して、下請事業者(フリーランス・個人事業主)に対して、
- 納品物の受取拒否
- 下請代金の支払遅延
- 下請代金の減額
- 不当に低い金額での発注
- 物品の強制購入
など、悪質な取引を行うクライアントからフリーランスを守ってくれる法律です。
フリーランスは下請法の対象になる?
下請といえば、中小・零細企業のイメージが強いと思いますが、フリーランスは、対象になるのでしょうか?
結論から言うとフリーランスも下請法の対象になります!
では、具体的に下請法の対象となる取引について、見ていきましょう。
製造委託
製造委託とは、物品の販売や製造を行う親事業者(クライアント)が、下請事業者に製造や加工を委託する取引のことです。
物品とは動産(家具など)のことで、家屋などの不動産は対象外です。
修理委託
修理委託とは、物品の修理を行う親事業者(クライアント)が、下請事業者に修理を委託する取引のことです。
情報成果物作成委託
ソフトウェアや映像・コンテンツなどの情報成果物の作成や提供を行う親事業者(クライアント)が、下請事業者にプログラムなどの成果物の作成を委託する取引のことです。
フリーランスの中では、
- エンジニア
- プログラマ
- デザイナー
- イラストレーター
- ライター
などが対象になります。
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役務提供委託
各種サービスや役務を提供している親事業者(クライアント)が、下請事業者にサービスや役務を委託する取引のことです。
「サービス提供委託」とも呼ばれます。
役務提供委託は、適用範囲の考え方が分かりづらいのですが、簡単に説明すると以下のとおりです。
配送業務を提供している会社が個人に配送業務を委託すること
つまり、親事業者が提供している役務と同じ役務を提供することです。
ここまで、下請法の対象となる取引について説明してきましたが、すべての事業者に適用されるのでしょうか?
次は、下請法が適用される事業者の定義について解説します。
下請法の対象となる事業者とは?
実は、すべての事業者が下請法の対象になる訳ではありません。
具体的には、親事業者(クライアント)の資本金の金額によって決定します。
物品の製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託の場合
- 親事業者の資本金が3億円以上:資本金3億円以下の下請事業者が対象
- 親事業者の資本金が1,000万円~3億円:資本金1,000万円以下の下請事業者が対象
情報成果物作成委託・役務提供委託の場合
- 親事業者の資本金が5,000万円以上:資本金5,000万円以下の下請事業者が対象
- 親事業者の資本金が1,000~5,000万円:資本金1,0000万円以下の下請事業者が対象
下請法の観点で、フリーランスは、クライアント企業の資本金が1,000万円以上か必ず確認しておきましょう。
逆に資本金が1,000万円未満のクライアントは下請法の対象外という点に注意してください。
下請法における親事業者の遵守義務
下請法では、親事業者(クライアント)に対して、4つの遵守義務が定められています。
- 書面の交付義務
- 下請代金の支払期日を定める義務
- 書面の作成・保存義務
- 遅延利息の支払い義務
それでは、詳しく見ていきましょう。
書面の交付義務
書面の交付義務とは、発注をあたって、具体的な内容を記載した書面を交付しなければいけない義務のことです。
書面には、
- 親事業者名
- 下請事業者名
- 納期
- 金額
- 支払期日
- 支払方法
などを記載しなければいけません。
具体的には、契約書にて、両者が合意した内容を記載することになります。
「親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。
ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない」(引用:下請法第3条・公正取引委員会)
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下請代金の支払期日を定める義務
下請業務の代金や報酬の支払いは、前もって支払期日を定めておく必要があります。
ポイントは、支払期日が納品日から60日以内に設定しなければいけません。
また、下請法では、できる限り短い期間で支払うことが求められています。
『下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、親事業者が下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日。次項において同じ。)から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない』
(引用:下請法第2条2・公正取引委員会)
書面の作成・保存義務
下請取引が完了したら、取引した内容を書面で記録し2年間は保存しなければいけません。
『親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、公正取引委員会規則で定めるところにより、下請事業者の給付、給付の受領(役務提供委託をした場合にあつては、下請事業者がした役務を提供する行為の実施)、下請代金の支払その他の事項について記載し又は記録した書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成し、これを保存しなければならない』
(引用:下請法第5条・公正取引委員会)
遅延利息の支払い義務
支払期日までに下請代金が支払わなかった場合、年利14..6%の遅延利息を支払わなければいけません。
遅延利息は、納品日から60日を経過した日から実際に支払われた日までの期間で計算します。
『親事業者は、下請代金の支払期日までに下請代金を支払わなかつたときは、下請事業者に対し、下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日)から起算して六十日を経過した日から支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に公正取引委員会規則で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない』
(引用:下請法第4条2・公正取引委員会)
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下請法における親事業者の禁止行為
下請法では、書面の交付や支払期日を定めるなどの義務だけでなく、フリーランスのような立場が弱い事業者を守るため、「親事業者の禁止行為」が定めれています。
もし、親事業者が禁止事項に違反した場合、公正取引委員会の調査のもと、3つの罰則や措置が取られます。
- 改善を求める勧告後に公表
- 違反行為の該当を記載した書面を交付・指導
- 違反行為をした企業及び個人に対して最高50万円の罰金
それでは、禁止行為について詳しく見ていきましょう。
受領拒否の禁止
下請事業者に責任がないにも関わらず、納品物の受取を拒否することは禁止されています。親事業者の都合は関係ありません。
たとえば、
といったケースを禁止することで、報酬が支払われない、ということを防げます。
下請代金の支払遅延の禁止
下請代金や報酬の支払いは、事前に設定した支払期日までに支払わないいけません。
なお、下請代金の支払期限は、納品日から60日以内となっています。
もし、納品日から60日を超過しても支払われない場合は、年利14.6%の遅延利息を請求できます。
下請代金の減額の禁止
下請事業者に責任がないにも関わらず、事前に契約した下請代金を減額することは禁止されています。
仮に下請事業者に責任があり、両者の合意があったとしても、下請法の禁止取引なったケースもあります。
不当返品の禁止
下請事業者に責任がないにも関わらず、受領した納品物を返品することは禁止されています。
ただし、下請事業者の納品物に明らかな瑕疵がある場合は、例外となります。
買いたたきの禁止
一般的に支払われるべき対価と比較して、極端に低い下請代金を要求することは禁止されています。
著しく低い報酬は、法律で禁止されているので、フリーランスにとっては安心材料です。
物の購入強制・役務の利用強制の禁止
親事業者が下請事業者に対して、物品の購入やサービスの利用を強要することは禁止されています。
正当な理由がある場合は、購入代金や利用料を下請代金に上乗せして支払わなければいけません。
報復措置の禁止
下請法の禁止取引を告発した場合、報復として取引の停止、取引数を減らすなどの行為は禁止されています。
不当な扱いを受けているが、告発によって仕事が受注できない、といったトラブルを回避するための禁止内容です。
有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
下請事業者が業務で必要な有償支給原材料を親事業者から購入する場合、対価の早期支払いを請求したり、下請代金から控除することは禁止されています。
割引困難な手形の交付の禁止
下請代金を手形で支払う場合、支払期日までに一般の金融機関で割引を受けづらい手形の交付は禁止されています。
下請事業者が報酬を受けづらくなり、資金繰りに影響するので、このような行為を禁止しています。
不当な経済上の利益の提供要請の禁止
親事業者(クライアント)の利益のために、下請事業者に現金やサービスなどの利益を提供させることは禁止されています。
たとえば「二次使用の権利料を支払わない」といったケースも、この禁止取引に該当します。
不当なやり直し等の禁止
下請事業者に責任がないのにも関わらず、追加報酬なしにやり直しを求めることは禁止されています。
正当にやり直しを求める場合は、具体的な内容や期日を書面で作成して、両者が合意しなければいけません。
禁止取引や違反行為があったらどうする?
親事業者(クライアント)の違反行為は、公正取引委員会や中小企業庁に通報することで、改善に向けて動いてくれます。
通報することによる報復措置は禁止されているので、その点は安心なのですが、やはり、その後の取引は難しくなる可能性が高いです。
なので、
- まずは下請法をしっかり理解すること
- 契約締結の段階から契約書・注文書をチェックすること
- 下請法に抵触する可能性を担当者に確認すること
が大切です!
担当者は、下請法について知らないこともあるので、「最近、法律が変わったようで、こういう取引は禁止されているらしいですよ」と、それとなく伝えることも手かもしれません。
まとめ
今回は、フリーランスが知っておきたい下請法の基礎知識について解説しました。
フリーランスは、仕事を受注側なので、どうしても弱い立場になってしまいます。
一方で、下請法によって不利益や不当な扱いを受けないように様々な禁止取引や条件が定めれています。
ただ、すべての事業者がこの法律を遵守して活動をしているとは限りません。
しっかり知識を身につけて自分を守れるように事前の確認が大切です。
今回の記事が、皆さんの活動に少しでもお役に立てれば幸いです。
それではまた!!!