複業したら年金はどうなる? 年金のしくみを理解しよう!

パラレルワーク(複業)や副業をすると、年金はどのように納めれば良いのでしょうか?

金額や期間がどのように変わるのかも気になるポイントですよね。

そこで今回の記事では、パラレルワーク(複業)や副業における年金の仕組みについて解説します。

既にパラレルワーク(複業)を始めているあなたはもちろん、興味を持っているあなたや、これからチャレンジする予定のあなたも、是非チェックしてみてください。

こーへい
年金のしくみを知って、少しでも年金保険料を安くしよう!
当記事の内容はこちら
  • 年金には「国民年金」「厚生年金」「企業年金」などのタイプがある
  • パラレルワーク(複業)や副業の場合、働き方によって利用する年金制度や金額が異なる
  • 少しでも年金保険料を安くするためには、それぞれの年金ごとの工夫が必要

年金の種類は?

日本国内では、20歳以上60歳未満の人は公的年金の加入が義務づけられています。

しかし、年金の種類は国民年金ひとつではありません。種類別に紹介していきましょう。

国民年金

基礎年金」とも呼ばれる年金で、20歳以上60歳未満のすべての国民の加入が義務づけられています。

保険料は定額で、支給額は加入期間によって決定されます。満期40年間納めていれば満額が支給され、以降は年数に応じて減額されていきます。

厚生年金

社会保険のひとつとして組み込まれている年金です。主に会社員が支払っています。

基礎年金である「国民年金」に対して、上乗せで支払う仕組みになっており、支給額も国民年金に追加されます。

保険料は、毎年4~6月の給与とボーンスをベースにして算出されます。負担金額は、会社と従業員が折半することになります。

企業年金

企業によって、「国民年金」と「厚生年金」に追加して支払っている年金です。

公的な年金制度ではなく、私的な民間年金のひとつで、大手企業などが積極的に採用している制度でもあります。

以下は、企業年金の主な種類です。

  • 確定給付企業年金:「規約型企業年金」「基金型企業年金」など、所属会社とは別の母体が年金資金を管理する
  • 確定拠出年金:従業員が自ら掛け金を運用し、給付を受ける
  • 退職一時金:退職時に金蔵年数に応じた一時金を受け取る

保険料は会社ごとの規定によって変化しますが、上記2つの年金に加算して支払わされます。支給額が加入期間と支払総額によって決定されるのは同様ですね。

「国民年金」「厚生年金」に加えて支給されるため、老後の保障が手厚くなります。

年金の「〇階建て」とは?

支給される年金について、しばしば「〇階建て」という言葉で表現されることがあります。

これは、年金制度を建物の構造に例えたものです。

  • 1階:国民保険
  • 2階:厚生年金
  • 3階:企業年金
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(出典:野村証券https://dc.nomura.co.jp/business/knowledge/system.html

階層がより上に上がるほど、老後の給付額は多く、補償が手厚くなります。

あなたが利用する年金はどれ?

パラレルワーク(複業)や副業をする場合、どの年金制度が当てはまるのでしょうか?

実は、一口に「パラレルワーク(複業)」「複業」とっても、実際の働き方によって適切な年金制度が変わります。

それぞれの雇用形態別に、適切な年金制度を紹介します。

個人事業主の場合

会社と雇用契約を結ばず、フリーランスでパラレルワーク(複業)をしている場合は、国民年金のみを利用することになります。

税額は一律となっているため、所定の方法で引き落としや納金をおこないます。

20歳以上から60歳未満まで支払い、以降は加入期間に応じた金額を支給してもらいます。未納期間があった場合は、さかのぼって納めることもできるでしょう。

個人事業主の場合、年金義務は国民年金のみのため、月々の負担は軽くなりやすいです。

一方で、納めている金額が少ない分、老後の支給も少なくなります。手厚い保障を受けるためには、貯金をはじめとしたさまざまな対策が求められるでしょう。

会社員+事業所得の場合

会社員が事業所得としてパラレルワーク(複業)や副業をしている場合は、国年保険と厚生年金の2つに加入することになります。

「会社員」とは正社員だけではなく、派遣社員や契約社員なども含みます。

「事業所得」とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業やその他何らかの「事業」を営むことで得た収入のことです。

会社員のかたわら、業務委託としてイラストレーターやライター、エンジニアや講師などを務めている場合などに適用されるでしょう。

支給額は、国民年金・厚生年金共に加入期間と給与額に応じて決定されます。

そしてこの場合、支払う年金額は一定です。

パラレルワーク(複業)や副業の収入が上がったところで、高い年金を納める義務はありません。

会社員+雑所得の場合

会社員が雑所得としてパラレルワーク(複業)や副業をしている場合は、国年保険と厚生年金の2つに加入することになります。

「会社員」とは正社員だけではなく、派遣社員や契約社員なども含みます。

「雑所得」とは、所得税法で分類されている所得のいずれにも含まれない収入のことです。

「利子・配当」「不動産」「給与(アルバイトやパートを含む)」「山林」などのいずれの所得にも含まれないパラレルワーク(複業)や副業は、雑所得として考えます。

代表的なものとしては、仮想通貨やネットオークション、FXなどが挙げられるでしょう。

支給額は、国民年金・厚生年金共に加入期間と給与額に応じて決定されます。

そしてこの場合も、支払う年金額は一定です。

パラレルワーク(複業)や副業の収入が上がったところで、高い年金を納める義務はありません。

会社員+給与所得の場合

会社員が給与所得(パートやアルバイトなど)でパラレルワーク(複業)や副業をしていた場合、国年年金といずれかの勤務先の厚生年金に加入することになります。

「会社員」とは正社員だけではなく、派遣社員や契約社員なども含みます。

これはたとえパートやアルバイトであっても、以下の条件を満たしていると、勤務先の社会保険に加入する義務があるからです。本人の意志で拒否することはできません。

  • 1週間あたりの所定労働時間(労働契約で決められた各従業員が働くべき時間)が20時間以上
  • 1か月あたりの賃金が8万8,000円(年収換算で106万円)以上
  • 雇用期間が1年以上見込まれる
  • 学生ではなない
  • 従業員数が501人以上の企業で働いている

(出典:日本年金機構https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20131203.html

上記の条件を満たしていなければ、本業の会社側の厚生年金に加入し続けるだけで構いません。

毎月の給与から、厚生年金保険料が天引きされるだけで良いのです。

ただし、上記の条件を満たしている場合は、パート・アルバイト先でも厚生年金への加入義務が生じます。

両方の勤務先について届出をおこない、どちらかを「選択事業所」にして年金関連の手続きを一括化する必要があるのです。

その際、具体的な流れは以下のようになっています。

  1. 自分でメインの会社を管轄している年金事務所に出向き、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する
  2. 年金事務所で給与収入の合計額に基づいた社会保険料を計算し、会社ごとに案分して年金の支払額を決定する
  3. 年金事務所からそれぞれの勤務先に厚生年金保険料の通知がされる
  4. それぞれの勤務先で、毎月の給与から厚生年金保険料が天引きされる

つまり、アルバイトやパートのパラレルワーク(複業)・副業を活発におこなうと、支払うべき厚生年金保険料は増えるということになるというわけです。

年金保険料を節約する方法は?

パラレルワーク(複業)や副業をする際に、年金保険料の支払いを少しでも節約するために、工夫できるポイントを紹介します。

【国民年金】確定申告で控除を受ける

フリーランスで活動する個人事業主の場合、確定申告時に「国民年金保険料控除証明書」を提出すれば、国民年金保険料の控除を受けることができます。

「国民年金保険料控除証明書」とは日本年金機構から送られてくる証明書で、支払い義務の金額を大幅に減らす手助けをしてくれます。

【国民年金】納付免除を受ける

前年度の所得によっては、国民年金保険料そのものの納付を免除してもらうことが可能です。

失業者や低額所得者を救済するための制度なので、本人の所得はもちろん、世帯主や配偶者の所得も合わせて審査されます。

免除のタイプと基準は、以下の5種類です。

  • 全額免除:前年所得が「(扶養親族等の数+)×35万円+22万円」の範囲内
  • 4分の3免除:前年所得が「78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等」の範囲内
  • 半額免除:前年所得が「118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等」の範囲に胃
  • 4分の1免除:前年所得が「158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等」の範囲内
  • 納税猶予:前年所得が「(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円)の範囲内

そして支払いが免除されても、年金は2分の1給付してもらえるため、未納よりも免除申請をおこなった方が安定するでしょう。

【厚生年金】4~6月の残業を少なくする

毎年4~6月の残業を減らし、残業代を少なくしておくと、厚生年金保険料が安くて済みます。

これは、4~6月の3カ月の給与を「標準報酬月額」として、それを基に社会保険料(厚生年金や健康保険など)を計算する仕組みがあるからです。

給与が高いほど支払総額も上がりやすいため、この期間の収入をできるだけ低くしておくことで、厚生年金料も節約しやすくなるというわけです。

残業代で稼いでいる人は、この時期にぐっと勤務時間を減らして、社外のパラレルワーク(複業)や副業で収入バランスを取ると良いでしょう。

まとめ

今回の記事では、パラレルワーク(複業)や副業における年金の扱いについて解説しました。

年金には、20歳以上60歳未満の全員が加入する「国民保険」や、会社の社会保険に含まれる「厚生年金」、一部会社が導入している「企業年金」などがあります。

それぞれ働き方によって選択する年金制度が異なっており、支払い金額や条件も異なっています。

パラレルワーク(複業)や副業をする場合、働き方次第で必要な手続きや、納めるべき保険料や変わることもあるため、事前にしっかり確認しておきましょう。