知っておきたい税金・確定申告の基礎知識【複業の実務】

パラレルワーク(複業)や副業に取り組む際は、「確定申告」の義務が生じます。

確定申告をしないでおくと、最悪の場合は脱税として処罰を受けることになってしまうのです。

しかし、いざ「確定申告」と言われても、何をどうすれば良いのかわからないですよね。

今回の記事では、パラレルワーク(複業)や副業をする上で必要になる、確定申告の基礎知識を紹介していきましょう。

[st-kaiwa1]パラレルワーカーにとって確定申告は重要なので覚えておきましょう![/st-kaiwa1]

そもそも「確定申告」とは何なのか?

確定申告」とは、納めるべき税金額を決めるために、収支状況や家族状況などを申告する制度のことです。

本来であれば、労働者全員が確定申告をしなければなりません。企業に所属して働いていると、「年末調整」として雇用側が自動的におこなってくれるのです。

そのため、確定申告をおこなう必要があるのは、フリーランスやパラレルワーク(複業)で働いている人だけと思われがちです。

しかし、たとえ企業に所属していても副業をしているサラリーマンは、確定申告の必要があるかもしれません。

確定申告が必要な人

実際に、確定申告が必要な人の条件は以下のようになっています。

  • 事業所得があった(20万円以上)
  • 不動産所得があった
  • 配当所得があった
  • 給与所得があった(年末調整の範囲外)
  • 退職所得があった
  • 譲渡所得があった
  • 山林所得があった
  • 一時所得があった
  • 雑所得があった(年金、一定額以下の副業など)

副業をしている場合は、「年間20万円以上の所得がある場合」に確定申告が義務になります。

この場合の「所得」とは「売上-必要経費」の金額です。(必要経費については後述します)

副業の所得区分

確定申告の「所得」には、全10種類の区分があります。

副業の場合は、主に以下のような所得区分に該当します。

  • 給与所得:アルバイト、パートなど
  • 事業所得:エンジニア、プログラマー、アフィリエイト、ネットオークション(せどり)、ハンドメイド販売、ドライバーなど
  • 不動産所得:家賃収入、駐車場収入など
  • 譲渡所得・配当所得:株式投資など
  • 雑所得:仮想通貨取引、FX取引など

確定申告と年末調整の違い

「年末調整」とは、給与から天引きされている所得税を計算しなおし、過不足を確認するものです。

具体的な実施期間は企業によって異なりますが、毎年11月から12月にかけておこなわれます。

12月分の給与で、その過不足を調整するというスタイルが一般的でしょう。

企業に所属するサラリーマンの場合、年末調整が確定申告のかわりです。

一部例外はありますが、細かい計算や税務署への申告は、雇用側がかわりにおこなってくれるというわけです。

サラリーマンでも確定申告が必要になる場合

一方で、企業に所属して働くサラリーマンであっても、確定申告が必要な場合があります。

あるいは、確定申告を別途おこなった方が、控除が受けられてオトクになるというケースもあります。

以下は、サラリーマンでも確定申告が義務であるケースです。

  • 給与取得が年間2,000万円以上
  • 2カ所以上から給与を受け取っている(複業)
  • 副業所得が20万円以上(事業所得、配当所得、不動産所得など)
  • 災害減免法で源泉徴収の猶予を受けている

以下は、サラリーマンでも確定申告をした方が良いケースです。

  • 医療費控除を受ける(医療費が10万円以上の場合)
  • 初めて住宅ローン控除を受ける(2年目以降は年末調整で対応)
  • 年末調整が受けられない(年の途中で退職しており、再就職をしていない)
  • ふるさと納税の納付先が6カ所以上
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確定申告の時期はいつ?

確定申告の時期は、毎年2月半ばから3月半ばにかけての1カ月程度の間です。

この期間に、管轄の税務署に所得状況をはじめとした申告をおこなう必要があります。

ただし、万が一この期間を過ぎてしまった場合でも、確定申告の受付自体は可能です。

何らかの事情で確定申告が遅れてしまう場合でも、申告そのものは必ずおこなうようにしましょう。

また、あらかじめ遅れが把握できている場合は、税務署への連絡や相談をおこなってください。

確定申告の提出方法は?

確定申告の提出方法は、以下の3つがあります。

  1. 税務署に郵送する
  2. 税務署で直接提出する
  3. 電子申告システム「e-Tax」を利用する

「3」の「e-Tax」はオンラインで確定申告のすべてが終了するためとても便利です。

関連書類の送付ができれば、スマートフォンから提出することも可能です。

24時間いつでも確定申告ができる上、還付もスピーディーになります。

ただし、前もって「電子申告等開始届出書」を提出する必要がありますし、電子証明書(マイナンバーカードなど)を用意しておく必要もあります。

加えて、ICカードリーダライタがないと申告ができないため、設備面を充実させてかチャレンジする方法だと言えます。

確定申告の種類は?

確定申告には2種類あります。それぞれメリット、デメリットはもちろん、用意する書類や帳簿の付け方も変わってきます。

青色申告

  • 青色申告特別控除がある(65万円 or 10万円)
  • 家族への給与を必要経費として算入できる
  • 純損失の繰越しができる

青色申告は高い絶税効果がある確定申告方法です。

特別控除が用意されている上に、赤字が翌年に繰り越せます。

青色申告をするためには、税務署に「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。窓口の直接手渡しでも、郵送でも構いません。

副業であったとしても、青色申告をおこなうことは可能です。

ただし、年間を通した取引を複式帳簿の形式で記録しておかなくてはいけないので、不慣れな場合はやや苦労するでしょう。

その場合は、青色申告会のサポートを受けたり、青色申告用の会計ソフトを導入したりするのがおすすめです。

白色申告

  • 貸借対照表が不要
  • 開業届等の提出が不要
  • 変動所得と被災事業用資金の損失は翌年に繰り越せる

白色申告は、事前申告の必要がない上、帳簿も簡易帳簿で良いため、手間や時間が節約できるというメリットがあります。

一方で、青色申告のような高い節税効果がないというデメリットもあります。

どちらの方法で確定申告をするか?

いざ確定申告をするとき、どちらの方法を選択すれば良いのでしょうか?

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(出典:弥生株式会社 https://www.yayoi-kk.co.jp/news/20110208.html

かつては白色申告は帳簿保存の義務はありませんでした。これが白色申告を選択するメリットのひとつでもあったのです。

しかし、平成26年1月から、白色申告であっても記帳・帳簿の保存義務が発生しました。

以下は保存義務の期間です。

  • 法定帳簿:7年間
  • 任意帳簿:5年間
  • 決算に関して作成した棚卸表、その他の書類:5年間
  • 業務に関して作成・受領した書類、納品書、送り状、領収書などの書類:5年間

以下は、白色申告で確定申告をする人のアンケート結果です。

「どうして青色申告で確定申告をしないのか?」という質問です。

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(出典:弥生株式会社 https://www.yayoi-kk.co.jp/company/pressrelease/20140204.html

白色申告をする人の多くが、「収入が少ないから青色申告をしない」と考えています。

しかし、以下をチェックしてみましょう。

実際に青色申告と白色申告では、収入差は大して存在しないのです。

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(出典:弥生株式会社 https://www.yayoi-kk.co.jp/company/pressrelease/20140204.html

そのため、白色申告をおすすめするのは、「確定申告の手間を節約したい人」や「初めての確定申告なので白色申告で様子を見たい人」などです。

たとえ小規模な副業収入だとしても、最終的な節税効果を考えると、ゆくゆくは青色申告にシフトチェンジしていくのがおすすめです。

確定申告をすると税金が戻る?

確定申告をすることで、払い過ぎていた税金の還付が受けられます

これは、前述した確定申告の義務がない場合でも適用されることがあります。

確定申告をする必要がない人でも、申告をすることで還付金を受け取れる場合があるというわけですね。

また、以下の条件を満たしている人は確定申告をおこなった方が良いです。

  • 必要経費や各種所得控除によって、所得税が源泉徴収された税額よりも低くなる場合
  • 医療費控除、寄附金控除、雑損控除などがある場合(確定申告をすると受けられる)
  • 事業所得や不動産所得などが赤字であっても、他の所得と相殺できる場合

追加の納付が必要になるケースも

確定申告で還付金が受け取れるのは、あくまで過払いだった場合のみです。

確定申告の内容によっては、不足分の追加納付が必要になるケースもあります。

まとまった納付ができない場合は、条件次第で延納措置が受けられることもあります。

確定申告の「必要経費」とは?

確定申告をする際には、「必要経費」を正確に申告する必要があります。

確定申告における「所得」とは、「売上から必要経費を抜いた金額」だからです。

事業をおこなうためにかかった費用は、基本的に「必要経費」に含まれます。

副業をしている場合は、自宅を事務所として使用するでしょう。その場合は、家賃や光熱費、インターネット代などの一部を必要経費として計上することも可能です。

ただし、以下は必要経費とみなされないため注意してください。

  • 家族のための地代・家賃
  • 所得税
  • 住民税
  • 罰金・科料・過料
  • 賄賂
  • 実費以外の出張費用
  • 事業に用いていない範囲の地代・家賃・光熱費など

確定申告に必要な書類は?

確定申告をするためには、税務署に提出する書類を準備する必要があります。

  • 白色申告の場合:収支内訳書、源泉徴収票
  • 青色申告の場合:青色申告決算書、源泉徴収票
  • 株式投資がある場合:確定申告書B第三表、株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書、源泉徴収票など

ここで注意したいのは、領収書や帳簿の提出は不要ということです。

もちろん、事業を進める上では必要なものです。領収書や帳簿類は、自分でわかりやすいよう整理して保存しておきましょう。税務調査が入った場合などで、提出できるようにしておいてください。

また、すべての申告方法で、以下の書類が必要になります。

  • マイナンバーカード(持っていない場合は番号確認書類か身元確認書類、扶養家族分も必要)
  • 前年分の申告書等の控え
  • 利用者識別番号等の通知書類
  • 預貯金口座番号(申告者名義)
  • 印鑑

加えて、所得控除で該当する場合は、以下の書類も必要になります。

  • 医療控除を受ける場合:医療費の領収書、保険金の補てん金額が分かる書類
  • 社会保険料控除を受ける場合:社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
  • 小規模企業共済等掛金控除を受ける場合:掛金額の証明書
  • 生命保険料控除・地震保険料控除を受ける場合:保険会社などが発行する保険料控除に関する証明書
  • 寄附金控除を受ける場合:寄附した団体などから交付された領収証

確定申告の手順は?

それでは、実際に確定申告をする際の手順を紹介していきましょう。

  1. 申告用紙の入手
  2. 必要書類の準備
  3. 申告書の作成
  4. 申告書の提出
  5. 納付・還付

確定申告をしないとどうなるの? ペナルティーはある?

前述したように、確定申告は一定の条件を満たしている場合は、必ずおこなわなくてはいけないものです。

確定申告を怠っていると、様々なきっかけから税務調査がおこなわれて税務署にバレるでしょう。

これはフリーランスやパラレルワーク(複業)で本格的に事業をおこなっている人から、本業の傍らで副業をやっている人まで、すべての対象者に言えることです。

確定申告の義務があったのに、怠っていた場合は以下のようなペナルティーが発生する可能性もあります。

無申告加算税

本来納めなくてはいけない税金があったのに、確定申告していなかった場合は、未納の税額によって加算税が発生します。

ただし、一定の減免措が置適用される場合もあります。

  • 50万円以内:15%
  • 50万円以上:20%

延滞税

確定申告の期限内に納められなかった税金には、遅延期間に応じて延滞税がかかります。

延滞税の最大税率は年利14.6%です。

重加算税

悪質な未申告だと判断された場合は、無申告加算税に加えて、重加算税を納めなくてはいれません。

重加算税の税率は、未納の税額の40%です。

まとめ

今回は、副業をする上で知っておきたい税金・確定申告の知識を紹介しました。

「確定申告」とは、納めるべき税金額を決めるために、税務署に所得や家族状況を申告する精度です。

毎年2月半ばから3月半ばにかけて、管轄の事務所に提出します。

たとえサラリーマンであっても、一定の条件を満たしていれば確定申告が必要です。

特に副業をしている人は、必ず確定申告をおこなうようにしましょう。

不慣れな人や、手間を節約したい人は「白色申告」。

より高い節税効果を狙いたい人は「青色申告」がおすすめです。

本来は確定申告をしなければならないのにサボっていると、税務調査で発覚した際、様々なペナルティーが発生する可能性があります。

詳細を確認し、適切な確定申告をおこなうようにしましょう。